夢と現実の間の不思議な体験 断捨離⑨
開け放していたドアから、近所のYさんがうちに声を掛けてくれています。
どうしたの?
中に入ってこようとするYさんを、母は慌ててドアを手で塞ぎ、
何でもないのよ。大丈夫だから帰って。
いや!全然大丈夫じゃないでしょう、助けてもらわなきゃ!
私はドアに駆け寄り、Yさんに懇願します。
今まで気が付かなかったけど、部屋にとんでもない
荷物が溢れて大変なんです。
処分しようにも母が戻してしまうので、
全く先に進まないんです‼助けてください!
Yさんはただならぬ空気を察して中に入るなり、
唖然となさいました。
【私は数か月前に、親戚のうちの断捨離を手伝ってきたのよ。慣れてるわ!】
天の助けが来たと私は思いました。
いるいらない、いるいらない。
何も捨てようとしないさまよう母に、Yさんは声を大にして諭します。
娘さんが泣いて捨てろとこれだけ言ってるの、
あなたわからないとね、
娘さんを通して、亡くなったご主人が
あなたに伝えてるのよ!
私はわかってくれる人が現れたと思いました。
何も捨てようとしない母を尻目に、
Yさんと私たちはひたすら不要の荷物を
ゴミ袋に詰め込みました。
どれだけ出してもゴールが見えない。
たった2部屋にどれだけのものが折り畳まれていたのだろう。
息の詰まるほどの、向い合わせの箪笥の上段を
一気に開け放ち、すべての物を出した途端、
私の目に、箪笥の両側を繋げる、
目も覚めるようなピカピカの黄金の川が流れた。
その後、青い空と大地に横たわる阿蘇山のような
山が見えた。
荒れ果てた寒々しい山から、まるで生まれ変わったような、優しい穏やかな山の風景に変わった。
もう泣きなさんな。
Yさんの両手が、泣き張らした母の両頬を
優しく包み込んだ。
父の手だ‼
Yさんの手を通して、父はこうして母を包みたかったんだ。
お母さん、お父さんが来たんだよ。
お母さんにいつもそうしてあげたかったんだよ。
頬が高揚し、まだ父が生きていた頃の若くて綺麗な母に見えた。私の目だけに。
続く。